落石になった話し

私は山登りをするくせに、高所恐怖症気味なので岩登り等はやらないのですが、それでも永年山に行って
いると、危険な体験をする事があります。自然を相手にする事は何時も危険と隣り合わせである事を決して
忘れてはいけないと自覚する事はしょっちゅうです。
私が今までで一番恐い思いをしたのは、忘れもしない北アルプスの後立山の縦走をした時の事です。
唐松岳から五竜岳に向かう途中の牛首付近の岩場を歩いていた時に手をかけた一抱え程ある岩が
スッポリと抜け落ちて、私はその岩を抱えたまま転落してしまいました。
落ちた瞬間死を覚悟しました。 ほんのわずかな時間だったと思いますが頭の中を走馬灯のように色々な
人の顔がよぎりました。 それでも落ちた時に必死に岩を放り投げたのは覚えています。
気がつくと岩場の一角にフィックスされていた針金に股がひっかかる感じで止まっていました。
針金がなかったら恐らく谷底にまっ逆さまに落ちていたはずです。
岩場ではどんな大きな岩でも抜け落ちる心配がある事を知った恐怖の体験でした。

南アルプスの北岳に登った時はザックに差したピッケルのシャフトが岳樺の枝にぶつかり、その反動で
谷に転落してしまいました。  その時も運良く木の枝にひっかかって止まったのですが、これも一歩間違え
ば命を落とす所でした。

山梨県の笹子雁ケ腹摺山に冬に登った時は沢沿いの道を歩いていて道と思って足を踏み出した所が丁度
雪庇のようになっていて見事に沢に転落してしまいました。
このときは丁度渇水期だった沢の水量が少なくて助かりましたが、これも水量の多い時だったと思うとゾット
する体験でした。

どんな小さな山でも油断することなく細心の注意を払って登山しなければならないと言う事を過去の体験を
思い出すことにより再度自覚しました。


かき氷パワー?

山とかき氷、なんの関係があるのかとお思いの方もいらっしゃると思いますが、山で食べるかき氷はおいしい
という話です。
北アルプスの鏡平の山小屋では夏場は名物のかき氷を食べる事ができます。いつ頃からかき氷を始めたの
かは定かではありませんが20年以上の歴史がある事だけは間違いないようです。

高天原の山小屋で、鏡平のかき氷の話をしていた時の事です。 そばで話を熱心に聞いている若者がいま
した。 翌日、その若者は朝食もそこそこに山小屋を飛び出して行ったそうです。
私達も若者と同じコースをとって歩き出したのですが、途中ですれ違った人の話では若い人か「かき氷、
かき氷」と言いながら、風のように駆け抜けて行ったとの事でした。
多分若者は鏡平でかき氷を食べて、その日のうちに新穂高温泉まで下ったものと思われます。
私達はその日は双六小屋に泊まり、翌日鏡平でかき氷を食べたのですが、池に映る槍穂高を眺めながら
食べるかき氷の味は最高でした。
鏡平を目指して息も絶え絶えに登ってくる人に冷たいかき氷の話をすると、皆元気になりますし、恐るべし
かき氷パワーと言った所でしょうか。